「やる気が出ない…」
「続けたいのに、モチベーションが続かない…」
そんな経験、誰にでもありますよね。
一見すると「自分の根性が足りない」と思ってしまいがちですが、実はそれ、心理的な仕組みが大きく関係しています。
その鍵となるのが、心理学で広く知られている 自己決定理論(Self-Determination Theory)です。
この理論は、人が本当の意味でやる気を感じる状態を科学的に説明してくれるものです。
自己決定理論とは?モチベーションの源泉を解き明かす心理学
自己決定理論は、1980年代に心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンによって提唱されました。
「やる気=外から与えられるもの」という考えではなく、
「やる気は内側から湧き上がるもの」
そのためには3つの心理的欲求が満たされることが必要、というシンプルで力強い理論です。
>例:
• ご褒美があると頑張れるけれど、なくなるとやる気が落ちる
• 他人に言われたからやる、という状態が長く続かない
このような経験は、外的な動機づけだけではモチベーションを維持できないことを物語っています。
3つの心理的欲求とは
では、やる気を内側から引き出す3つの心理的欲求とは何でしょうか?
① 自律性 ― 自分で選んでいる感覚
「やらされている」よりも「自分で決めている」と感じられると、人は力を発揮します。
自律性とは、自分の価値観や意思に沿って行動できる感覚のこと。
例:
• 「上司に言われたから」ではなく「自分の意志で取り組んでいる」
• 自分でやる順番ややり方を決められる
この“自律性”が感じられると、努力が苦痛ではなく「やりがい」へと変わっていきます。
② 有能感 ― 自分の力を発揮できる感覚
自分の力で課題を乗り越えられると、人は自然とモチベーションが高まります。
この感覚は「褒められること」よりも、「自分で成果を実感すること」で強く育ちます。
例:
• 仕事で工夫した方法がうまくいった
• 練習したことが成果につながった
「自分でもできる」という小さな成功体験の積み重ねが、有能感を育てます。
③ 関係性 ― 人とのつながりの感覚
人は社会的な生き物です。
孤独な環境では、どんなにやる気があっても長続きしません。
信頼できる仲間や支え合える関係があることで、人は安心して挑戦できます。
例:
• 困ったときに助け合えるチーム
• 自分を理解してくれる仲間の存在
関係性が満たされると、「自分はここにいていい」という心理的な安心感が生まれます。
なぜこの3つが重要なのか
この3つの心理的欲求は、モチベーションの“土台”です。
たとえば、外からご褒美を与えることで一時的なやる気は引き出せても、
• 自律性がない → 指示がなければ動けない
• 有能感がない → 自信が持てない
• 関係性がない → 孤立して疲弊する
といった状態になり、長期的には意欲が下がってしまいます。
逆に、これらが満たされていると、
• やりたいことに夢中になれる
• 多少の困難にも踏ん張れる
• 継続的に成長できる
といった、ポジティブな行動サイクルが生まれます。
自己決定理論を日常生活に活かすヒント
自己決定理論は難しい理論ではありません。
日常のちょっとした工夫で、3つの欲求を満たすことができます。
• 自律性 → やることを「自分で決める」時間を持つ
• 有能感 → 小さな成功を言語化して自覚する
• 関係性 → 1人で抱え込まず、人とつながる時間をつくる
たとえば、仕事で「やらされ感」が強いとき、
少しでも自分で判断できる部分を見つけて取り組むだけでも、モチベーションの感じ方が変わります。
まとめ|“外からのやる気”ではなく“内からの動機”を育てよう
自己決定理論は、「自分らしく生きる」ことのヒントを与えてくれる心理学です。
外的な報酬や他人の期待に左右されるのではなく、
①自律性
②有能感
③関係性
を満たすことが、長く続くモチベーションの源になります。
次回の記事では、この理論を キャリアチェンジや転職活動にどう活かすか を、より実践的に解説します。


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