――コルチゾールと“幸福物質”の関係から考える
なんとなく、心が晴れない日が続くとき
理由ははっきりしないけれど、
気持ちが重たい。
小さなことにも疲れてしまう。
そんなとき、
「自分が弱いのかな」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
でも、もしかするとそれは、
心の問題というよりも、
ストレスにさらされた脳の反応なのかもしれません。
今日は、ストレスと脳の関係について、
少しだけ一緒に整理してみたいと思います。
ストレスが続くと分泌される「コルチゾール」
私たちが強いストレスを感じると、
体の中では「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。
コルチゾールは、
本来はとても大切な役割を担っています。
危険から身を守るために
血圧や血糖値を上げ、
すぐに行動できる状態をつくる。
いわば、
「非常事態モード」を支えるホルモンです。
短期的には必要な働きですが、
ストレスが長期間続くと、
コルチゾールが高い状態が慢性化することがあります。
研究では、
慢性的な高コルチゾール状態が
記憶に関わる海馬の働きに影響を与える可能性や、
不安・抑うつ症状と関連する可能性が指摘されています。
もちろん、これは単純な因果関係ではなく、
多くの要因が重なり合って起きるものです。
ただ、
「気合いが足りないから元気が出ない」のではなく、
脳がストレスにさらされ続けた結果かもしれない
という視点は、とても大切だと感じています。
幸福感に関わる物質──「安心」から整うこころ
幸福感というと、
強い喜びや高揚を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、生理心理学の研究では、
心が安定している状態や、安心していられる状態が、
幸福感の土台になっている可能性が示されています。
セロトニン──揺れすぎないための土台
セロトニンは「幸せホルモン」と紹介されることもありますが、
実際には、強い快楽というよりも、
感情の揺れを整える働きに関わっていると考えられています。
不安や怒り、焦りなどで大きく振れた心を、
少しずつ真ん中に戻していく。
そんな“安定の土台”のような役割です。
朝の光を浴びること、
一定のリズムで歩くことや咀嚼することなどが、
セロトニン神経系の働きと関連する可能性があることも報告されています。
派手な変化ではなくても、
生活のリズムを整えることが、
静かな安心につながることがあるのかもしれません。
オキシトシン──「安全」を感じる回路
そしてもうひとつ、
大切な役割を担っていると考えられているのがオキシトシンです。
オキシトシンは「愛情ホルモン」と呼ばれることもありますが、
生理心理学の観点からは、
社会的なつながりや信頼感と関連する神経内分泌系の働きとして理解されています。
穏やかな対話、
共感される体験、
信頼できる人とのやりとり。
こうした関わりの中で、
脳は「いまは安全だ」というサインを受け取ると考えられています。
オキシトシンは、その“安全の回路”を支える一つの要素かもしれません。
近年の研究では、
オキシトシンの働きがストレス反応の調整と関連している可能性も示唆されています。
つまり、
「誰かとつながること」は気休めではなく、
生理的なレベルで心身の緊張をゆるめる働きを持つ可能性があるのです。
幸福は「高まる」よりも「整う」から始まる
ここまでをまとめると、
幸福感は強い刺激によって作り出すものというよりも、
・感情が大きく揺れすぎないこと
・安心できる関係の中にいること
といった状態から、
ゆっくりと立ち上がってくるものなのかもしれません。
もし今、
「幸せを感じられない」と思うときがあったとしても、
それは喜びが足りないのではなく、
安心が足りない状態なのかもしれません。
まずは大きな幸せを目指さなくても大丈夫です。
少しほっとできる時間、
緊張がゆるむひととき、
安心できる誰かとのやりとり。
そうした小さな積み重ねが、
脳の回路を少しずつ整えていく可能性があります。
幸福は、無理に作るものではなく、
整った環境の中で自然に芽生えてくるものなのかもしれません。
最後に
もし今、
理由のわからないしんどさを感じているとしたら。
それは、
あなたが弱いからではないのかもしれません。
ストレスの中で、
一生懸命に適応してきた結果なのかもしれません。
今日ここまで読んでくださったこと自体が、
もう十分に、自分を大切にしようとしている証のようにも思います。
あなたの心が、少しずつ安心できる方向へ向かっていきますように🌿
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