「職場のモヤモヤの正体」シリーズ(全7話)|Part1〜ダブルバインド(矛盾したメッセージ)

仕事とメンタルケア

職場でこんな経験はありませんか。

  • 「自由にやっていいよ」と言われたのに、後から細かく注意される
  • 「相談して」と言われたのに、相談すると「自分で考えて」と言われる
  • 「意見を言っていい」と言われたのに、言うと空気が悪くなる

どちらに従えばいいのか分からず、
「自分の判断が間違っているのかな…」と感じてしまうこともあるかもしれません。

こうした状況を心理学では、「ダブルバインド(double bind)」と呼ぶことがあります。

今回は、職場でも起こりやすいこの現象について、心理学の研究背景とともにやさしく解説してみたいと思います。

ダブルバインドとは何か

ダブルバインドとは、
互いに矛盾するメッセージを同時に受け取り、どちらに従っても問題が起きてしまう状態を指します。

この概念は、文化人類学者であり心理学者でもあった
Gregory Bateson とその研究チームによって提唱されました。

この研究グループは、人間のコミュニケーションの中にある矛盾したメッセージ構造に注目しました。

そして、

  • 表面的な言葉
  • 非言語メッセージ(態度・空気)
  • 期待される行動

これらが互いに矛盾すると、人は強い混乱を感じることを指摘したのです。

職場でよく見られるダブルバインド

ダブルバインドは、決して特殊な状況だけで起こるものではありません。
むしろ日常的なコミュニケーションの中で見られることがあります。

たとえば、こんな場面です。

自由にやっていいと言われる

上司
「この仕事は自由にやっていいよ」

しかし後から

「なんでこのやり方にしたの?」

と言われる。

結果として
自由にやることも、指示を待つことも正解にならない状態になります。

意見を言っていいと言われる

会議で

「遠慮なく意見を言ってください」

と言われる。

でも実際に言うと

「それは違うと思う」

と強く否定される。

すると次第に
「意見を言うべきなのか、黙るべきなのか」分からなくなってしまいます。

相談してと言われる

上司
「困ったら相談してね」

相談すると

「そのくらい自分で考えて」

と言われる。

これも
相談しても、相談しなくても責められるダブルバインドになりやすい場面です。

なぜこんなコミュニケーションが起きるのか

多くの場合、ダブルバインドは悪意で行われているわけではありません
むしろ次のような心理が背景にあることが多いと考えられています。

上司自身も迷っている

組織では

  • 自由に任せたい
  • 失敗は避けたい

という二つの期待が同時に存在することがあります。
そのため、メッセージが矛盾してしまうことがあります。

暗黙のルールがある

日本の職場では特に

  • 空気を読む
  • 言わなくても分かるはず

といった文化が強いこともあります。
そのため言葉と本音がズレるコミュニケーションが生まれやすくなります。

非言語メッセージが矛盾する

心理学では、コミュニケーションは

  • 言葉
  • 表情
  • 声のトーン
  • 態度

など複数の要素で構成されると考えられています。

例えば
「意見を言っていいよ」と言われても

  • 表情が厳しい
  • 会議がピリピリしている

このような空気があると、受け取るメッセージは矛盾してしまいます。

ダブルバインドにいるときの心の反応

このような状況が続くと、人は次のような感覚を抱きやすくなります。

  • 何をしても正解がない気がする
  • 自分の判断に自信が持てない
  • いつも気を張ってしまう

そして次第に

「自分の感じ方が間違っているのかな」

と感じてしまうこともあります。

しかし心理学的には、
矛盾したメッセージの中にいると誰でも混乱すると言われています。

つまり、そのモヤモヤは
あなたの感覚が敏感すぎるというわけではないのかもしれません。

ダブルバインドに巻き込まれたときのヒント

もしこうした状況に出会ったとき、少し楽になる考え方があります。

1 状況の構造に気づく

まず

「これはダブルバインドかもしれない」
と気づくだけでも、心の整理が少し進むことがあります。

問題が

  • 自分の能力
    ではなく
  • コミュニケーションの構造

にある可能性が見えてくるからです。

2 確認する

可能であれば

「この場合はどちらを優先すればいいでしょうか」

と確認してみるのも一つの方法です。
矛盾した期待が、言葉にすることで整理されることもあります。

3 自分を責めすぎない

矛盾したメッセージの中では、誰でも判断が難しくなります。

そのため

「うまくできない自分が悪い」

と感じすぎなくても大丈夫な場合もあります。

Q&A よくある疑問

Q ダブルバインドはパワハラですか?

状況によります。

意図的に矛盾した指示を繰り返し、相手を追い込む場合は、
ハラスメントに近い問題として扱われることもあります。

ただし多くの場合は、
コミュニケーションのズレから生じることも少なくありません。

Q ダブルバインドは家族関係でも起こりますか?

はい。研究の中では、家族関係のコミュニケーションとしても研究されてきました。

ただし現在の心理学では、
単純に一つの要因だけで問題が生まれると考えるよりも、
複数の要素が関係していると理解されています。

まとめ

職場のコミュニケーションの中で

「どちらに従えばいいのか分からない」

そんな感覚を抱くことは、決して珍しいことではありません。

もしそんな場面に出会ったとき、
それはあなたの判断力が足りないからではなく、
矛盾したメッセージの中にいるだけなのかもしれません。

少しだけ距離をとって状況を眺めてみると、
見え方が変わることもあります。

あなたの心が、少しでも穏やかでいられますように🌿

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