誰かに責められた時、心はどう守ればいいのか──ミスかどうかに関わらず使える心理学の知恵

ストレスケア(心理学)

なぜ「責められること」はこんなにも心を消耗させるのか

誰かから何かを指摘された瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられるような感覚になったことはありませんか。それが自分の見落としによるものなのか、それとも巡り合わせのようなものだったのか、まだはっきりしないうちから、心はもう大きく揺れ始めてしまうものです。

心理学者のラザルス博士とフォルクマン博士(Lazarus & Folkman, カリフォルニア大学バークレー校, 1984年)は、人がストレスを感じる強さは、出来事そのものの大きさよりも「自分にとってこれはどれほどの意味を持つのか」「自分はこれにどう向き合えるのか」という心の中での受け止め方によって左右されると考えました。
つまり、まだ何も結論が出ていない「宙ぶらりんの状態」こそが、心を最も揺らす瞬間なのです。
ですから、今揺れているあなたの心は、とても自然な反応だといえます。

もし「自分のミスかもしれない」と感じた時

「したこと」と「自分そのもの」は、別のものとして考える

指摘を受けた時、多くの人は「私が至らなかった」という思いと「自分という存在そのものが至らない」という思いを、無意識のうちに一つに重ねてしまいがちです。

心理学者のタングニー博士(June Tangney, ジョージ・メイソン大学, 1990年代の一連の研究)は、この二つを分けて捉えることの大切さを示しています。
「今回の行動について見直す気持ち(罪悪感)」と、
「自分という存在そのものへの評価(恥の感覚)」は、本来まったく別のものです。
行動を振り返り、次に活かそうとする気持ちは、あなたという人そのものの価値とは切り離して考えることができます。

振り返ることと、自分にやさしくすることは、両立できる

セルフ・コンパッションという考え方を研究したクリスティン・ネフ博士(テキサス大学オースティン校, 2003年)は、自分の至らなかった点を認めることと、自分自身にやさしい言葉をかけることは、決して矛盾しないと述べています。
むしろ、自分を思いやりながら振り返った方が、次への一歩を踏み出しやすくなることが、研究によって示されています。「大切な友人が同じ状況にいたら、どんな言葉をかけるだろう」と想像してみることも、心を落ち着ける一つの方法です。

もし「自分の責任の範囲外」だったと感じた時

その出来事は、本当に自分がコントロールできたことだったのか

一方で、指摘された内容が、実際には自分の力の及ばないところで起きていたと感じることもあるでしょう。そんな時に役立つのが、心理学者のワイナー博士(Bernard Weiner, カリフォルニア大学ロサンゼルス校, 1985年)が提唱した帰属理論です。
ワイナー博士は、出来事の原因を「自分の内側にあるのか、外側にあるのか」「自分でコントロールできるものだったのか、できないものだったのか」という視点で整理することを提案しました。
指摘された出来事を、この二つの軸に沿って一度紙に書き出してみると、自分が背負う必要のある部分と、そうでない部分が、少しずつ見えてくることがあります。

外側の出来事まで、抱え込みやすい人へ

心理学者のロッター博士(Julian Rotter, コネチカット大学, 1966年)が提唱した「統制の所在(ローカス・オブ・コントロール)」という考え方によると、出来事の原因を何でも自分の内側に結びつけて捉えやすい人ほど、心の負担が大きくなりやすい傾向があるとされています。
あなたが今感じている重みの中には、本来は状況や巡り合わせによるものも、含まれているかもしれません。
それは、責める相手を裁くためではなく、あなた自身の心を軽くするための視点です。

どちらの場合にも効く、心の整え方

自分のミスであったとしても、そうでなかったとしても、共通して役立つ方法があります。
それが、心理学者のグロス博士(James Gross, スタンフォード大学, 1998年)が提唱した「認知的再評価」という感情調整の方法です。
これは、出来事そのものを変えるのではなく、出来事の意味づけを少しだけ変えてみるという方法です。

たとえば、「責められた」という出来事を、
「相手が期待を寄せてくれているからこそ、伝えてくれた言葉なのかもしれない」
「これは、今後の自分にとって一つの気づきの種になるかもしれない」
というように、少し視点をずらして眺めてみる。
この小さな言い換えの積み重ねが、心の反応そのものを、少しずつ和らげていくことが、研究によって確かめられています。

おわりに

責められたと感じた時、心が揺れるのは、あなたがそれだけ物事に真剣に向き合っている証でもあります。
ミスであったなら、行動を振り返りながらも自分自身にはやさしく。
責任の範囲外であったなら、その重みを一人で抱え込まずに、少しだけ肩の力を抜いてみてください。

今日という日、あなたの心が少しでも軽やかでありますように。
そして、これからのあなたの歩みを、いつでも応援しています🌿

出典

  • Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, Appraisal, and Coping. Springer Publishing Company.(カリフォルニア大学バークレー校)
  • Tangney, J. P. (1990s〜). Guilt and shame research.(ジョージ・メイソン大学)
  • Neff, K. D. (2003). Self-compassion research.(テキサス大学オースティン校)
  • Weiner, B. (1985). Attribution theory of achievement motivation and emotion.(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)
  • Rotter, J. B. (1966). Locus of control research.(コネチカット大学)
  • Gross, J. J. (1998). Cognitive reappraisal and emotion regulation research.(スタンフォード大学)

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